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心理学ワールド 83号 小特集 意識調査にみるPTAと母親 有馬 明恵(東京女子大学)・下島 裕美(杏林大学) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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23 小特集 どこへ行く? PTA りも多かった。  役員を引き受けてこなかった理 由は「私的理由」「公的理由」「人 間関係」の三つに分類され,「人 間関係」では父親よりも母親の得 点が高かった。学校という場で活 動するのは母親であることが多い が,母親はPTA役員を引き受け る前から人間関係のトラブルを経 験し,PTA活動を行う中でさら にそのトラブルが顕在化する懸念 を抱いている可能性がある。調査 ①における自由記述の記入率は父 親(45%)よりも母親(70%)が 高く,多くが否定的であった。退 会希望者は父親(27%)よりも母 親(36%)のほうが多かったこと からも,自分が近い将来PTA役 員になるかもしれないという母親 の切迫感の高さと父親の現実感の なさがうかがえる。 保護者はPTAを拒絶しているか  今後のPTA活動のあり方につ いて,「このまま存続すべき」「活 動内容を検討すべき」「活動の進 め方を検討すべき」「全てなくす べき」「わからない・考えたこと がない」の5択で回答を求めたと ころ,父親母親ともに「活動内容 を検討すべき(27.8% , 23.0%)」 「 活 動 の 進 め 方 を 検 討 す べ き (34.1% , 38.5%)」が多く,「全て なくすべき(5.9% , 8.5%)」は少 なかった。保護者はPTAの活動 の内容や進め方には不満である が,PTAの存在そのものを無意 味だとは思っていない。  特に働く母親がPTAに非協力 的であると捉えられがちだが,調 査③では役員経験回数は,働く母 親は2.08回,専業主婦は1.79回で あり,働く母親が非協力的とはい えない。また部長・委員長経験者 は,働く母親(38名)のほうが 専業主婦(22名)より多かった。 出校頻度は就労の有無による差は なく,「月2 〜 3回」「月1回」「2 ヵ 月に1回以下」がそれぞれ3割弱, 「週1回以上」が2割弱であった。 肯定的側面と否定的側面   調 査 ③ で は「PTA役 員 を 引 き受けた理由」15項目について 尋 ね た。「 卒 業 ま で に 一 度 は 引 き受けなければならなかったか ら(M=4.20)」は「3.どちらとも いえない(5段階評定)」よりも 有意に得点が高かった。次に得 点の高い「学校の様子を知りた かったから(M=3.07)」「子ども に関することを知りたかったか ら(M=2.88)」は3との差は有意 ではなかった。また「役員経験に 対する満足感」14項目について 尋ねた。「社会とのつながり」「日 常生活の息抜き」「地域の人たち とのつながり」「自分の特技をい かせた」「子どもが自分を誇りに 思った」は「3.どちらともいえな  毎年4月になると,PTAの役員 決めで母親たちは憂鬱になる。多 くの学校で「PTA役員は子ども が在学中に必ず一回はやる」こ とが暗黙の了解となっている。会 議は平日日中に開催されることが 多いが,子どもが人質となってい るような状況でPTA役員を断り 続けることは難しく,仕事を持つ 母親の多くは有給休暇を使って PTA活動に参加する。個人が特 定されないネット上では「PTA は本当に必要なのか」「やりたい 人だけがやればいい」などPTA に対する否定的な意見が散見さ れるが,実際のところ,保護者は PTAについてどう考えているの だろうか。本稿では,第一子が都 内公立小学校2 〜 6年に在籍する 保護者を対象に行ったPTA活動 についての三つのWeb調査(① 役員経験なしの父母各270名,② 役員経験ありの母親450名,③役 員経験ありの母親有職・無職各 200名)の結果の一部を報告する。 父親と母親の意識の違い  PTA役員は母親であることが 多い。調査①で,PTA活動を「母 親が担うべき」かを「1.まったく そう思わない」から「5.非常にそ う思う」の5段階評定で回答を求 めたところ,「全くそう思わない」 「あまりそう思わない」と回答し た母親(54%)は父親(33%)よ

意識調査にみる PTA と母親

東京女子大学現代教養学部 教授

有馬明恵

(ありま あきえ) Profile─有馬明恵 慶應義塾大学大学院社会学研究 科社会学専攻博士課程単位取得 満期退学。博士(社会学)。専門 は社会心理学,ジェンダー論,メ ディア論。著書は『内容分析の方 法』(ナカニシヤ出版)など。 杏林大学保健学部 教授

下島裕美

(しもじま ゆみ) Profile─下島裕美 慶應義塾大学大学院社会学研究 科心理学専攻後期博士課程単位 取得退学。博士(心理学)。専門 は認知心理学,発達心理学。著書 は『自伝的記憶の心理学』(共編 著,北大路書房)など。

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24 あるという信念に基づき子どもた ちのために熱心に活動する。とこ ろが,この母親たちのPTA活動 への適応は芳しくなく,役員終了 後の満足度も低い。PTA活動へ の適応に優れ役員経験による自己 の成長を肯定的に評価していたの は,前例踏襲や学校の下働きを望 む仕事に忙しい母親たちや仕方な く役員を引き受けた消極的な母親 たちであった。   ま た 調 査 ③ か ら, 母 親 た ち は 役 員 就 任 時 に「 他 の 保 護 者 と う ま く や ら な け れ ば な ら な い(M=3.91)」「他のお母さんた ちと同じようにPTAの仕事をき ちんとこなさなければならない (M=3.72)」というプレッシャー を強く感じていた。加えて,専 業主婦は働く母親に「専業主婦 と 同 じ よ う に 活 動 し て ほ し い (M=3.27 vs. M=2.42)」「家ででき ることを積極的に引き受けてほし い(M=3.87 vs. M=3.50)」と考え ていた。さらに,自由記述におい て,専業主婦は「仕事を理由に会 合を休む」と有職者を痛烈に批判 した。働く母親たちは,仕事で 培ったパソコンスキルを活用した 資料作り等で,欠席の埋め合わせ をすることはできないのである。 総 括  以上より,個々の事情やPTA 活動に対する思い,得手不得手等 に関わらず,PTAは「母親」と いう全員に共通する役割に期待さ れていることを果たすべき場とい える。規範から逸脱することは 由々しき事であるため,同調圧力 でお互いを縛り合う。そうした圧 力に母親たちは辟易しているの であろう。しかし,母親たちは PTAを無意味であるとは思わな い。活動内容を厳選し,効率的な 運営により子どもたちの成長に寄 与したいと考えているのである。 い」より有意に得点が低く,「子 どもたちが喜んだ」は有意に得点 が高かった。「母親たちと子育て の話し合い」「お母さんと友達」 「先生の情報入手」「親しいお母さ んと活動」は3より有意に得点が 高かった。PTAを引き受けた理 由は「一度はやらなければならな いから」という消極的なものだ が,役員経験後には人間関係の広 がりに満足しているのである。  同じく調査③で,PTAを変え ていくことは容易(24%)ではな く難しい(76%)と母親たちは考 えていた。また,PTA活動の10 の変更案に「1.非常に反対」か ら「5.非常に賛成」までと「6. 既に行っている」の6択で回答を 求めたところ,「会議を土日に開 催(12.0%)」「SNSの活用による 効率化(11.0%)」「地域活動に協 力(10.8%)」「ポイント制の導入 (10.0%)」はある程度行われてい た。働く母親に配慮した活動日時 の設定,無駄な会合の廃止が行わ れつつあるが,地域の行事にPTA が協力する慣例が残っており,ポ イント制により個々の事情を考慮 せずにPTA活動に公平に協力さ せるシステムが構築されつつあ るといえる。賛成の程度が極め て高かったのは,「活動内容の厳 選(M=4.29)」と「SNS活用によ る効率化(M=3.75)」であり,就 労の有無による差はなかった。母 親たちはPTA活動の効率化を強 く望んでいるが,専業主婦は有職 者よりも平日昼間の会議を「平日 夜(M=2.28 vs. M=3.07)」や「土 日(M=2.57 vs. M=3.12)」に開催 することに難色を示していた。 PTA活動が嫌われる理由  役員の担い手である母親たち に一律に同じことを求める同調圧 力が母親たちを苦しめていると思 われる。その一つが「負担は公平 に」という圧力である。調査③で は,家庭の事情(11項目)と個人 の事情(19項目)により「本部役 員・委員会の委員長」と「一般役 員」のそれぞれについて,「1.免 除されるべき」「2.免除されても よい」「3.免除されるべきではな い」の3択で回答を求めた。「本 部役員・委員長」は,「キャリア アップのための状況(M=2.82)」 「職業的地位(M=2.69)」「家族の 状況(M=2.26)」「下の子の問題 (M=2.06)」「役員経験(M=1.99)」 「 健 康 問 題(M=1.74)」 の6因 子 が 得られ た。「 一 般 役 員 」に つ いては,「キャリアアップのため の状況(M=2.85)」「職業的地位 (M=2.76)」「 家 族 の 状 況( 下 の 子の問題を含む)(M=2.29)」「役 員 経 験(M=2.11)」「 健 康 問 題 (M=1.89)」の5因子が得られた。 役職に関わらず,「就労」に関す る事情により役員が免除されるこ とは希であるが,「役員経験」や 「健康問題」には寛容な態度が示 された。どの母親にも起こりうる 普遍的な事情には理解が示される が,一部の母親にしか該当しない 特殊な事情により役員が免除され ることはないのである。  二つ目は,役員活動に求められ る均質性,すなわち母親たちは同 じように活動すべきという同調圧 力である。調査②の「役員を引き 受けた理由」「役員を引き受けた くなかった理由」「役員経験によ る自身の変化」「小学校とPTAの 理想的な関係」などに対する回答 をクラスター分析したところ,母 親たちは「子どものために活動す る母親」「PTAに批判的な母親」 「控え目な母親」「社会活動好き な母親」「合理的な母親」の5つ に分類された。「社会活動好きな 母親」は,積極的に役員を引き受 け,先生たちと自分たちは対等で

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